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泉の森自転車店
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マグネトーの再生

 マグネトーは英車の鬼門と呼べるだろう。これがしっかりとしていないと調子よく走らせる事が出来ない。まずは、分解点検から始めようと思う。

 マグネトーのタイミングギヤと反対側の軸端に、コンタクトブレーカーが取り付けられている。コンタクトブレーカーを取り外し、分解して一点一点を磨いて いく。気の遠くなる作業だが、それがまた面白い。

 マグネトーを分解する前にマグネトーボディーを清掃する。小雨の降る中、気晴らしにホームセンター&100円ショップに行き、分解に必要なプーラーと鎹 (かすがい)をホームセンターで、ステンレストレーとストッカーを100円ショップで購入した。
 マグネトードライブプレートをロックするツールは、鎹の先端を切り代用する。ドライブプレートを外すツールは汎用のプーラーの爪を削って使える様に改造 した。

 先日作った工具を使い、ドライブプレートを取り外す。まずは、鎹(カスガイ)を加工したロッキングツールでドライブプレートを固定し、ロックナットを取 り外す。フリクションプレートとファイバーギヤを外し、次に爪を加工したギヤープーラでドライブプレートを引き抜く。

 取り出したアーマチュアを分解する。両端のアーマチュアベアリングを外すには、アーマチュアベアリング専用のベアリングプーラが必要である。こう云った 工具も、品揃えの豊富なホームセンターでも販売されているので1つ有れば重宝するだろう。
 ベアリングを取り外すとアーマチュアコイルを抱き合わせているネジが現れるので、これを緩め、コンタクトブレーカー側のローター内部に格納されているコ ンデンサー端子のハンダを取るとアーマチュアコイルが完全に外れる。

 アーマチュアコイルの点検

 取り外したアーマチュアコイルを点検する。
測定には、SANWAのPC520Mを使用。
ファンクションスイッチを Ω に設定し一次側コイルの抵抗値を測定したところ、抵抗値は0.49Ωであった。
二次側コイルの抵抗値は3.99kΩ、アーマチュアコイルの巻き替えの必要は無さそうだ。
 コンデンサーの点検は、ファンクションスイッチを ┤├ に設定しコンデンサーの容量を測定したところ、コンデンサーの容量は0.69μFであった。絶 縁抵抗は、常温時で3.67MΩだった。
コンデンサーは交換しなければならない。

 BSAゴールドスターDBD34エンジンにはLucas製のMO1−Lタイプのマグネトーが使われている。
マグネトーの上にダイナモが載っかっている2階建てのスタイルでマグダイノとも呼ばれ、主に半世紀ほど前のシングルエンジンに搭載されていた。
 昨年イギリスのSRM社にアーマチュアコイルの巻き替えを依頼し、細々としたリペアーパーツもほぼ揃ったのだが一点だけ手配出来ない物が発生した。
どの様なパーツかと云うとコンタクトブレーカーカバークリップを取り付ける為のスタッドボルトなのだが、これがマグネトーエンドカバーの位置決めも兼ねて いるので単にストレートのスタッドボルトを使う訳にはいかない。
このままでは組み立て作業が進まないし何時までも放ったらかしには出来ないので自作する事にした。
 まずはネジのサイズを調べてみる。
これがまた厄介でBSWでもBSFでもなくBAと云う規格の細いネジが使われている。
たまたまダイナモの再生で取り替えた長いネジが2BAの長いネジだったのでこれを1インチ長に切って利用する事が出来た。
エンドカバー位置決めの胴体は1/4インチ径なので真鍮製のエアーコンプレッサーホースの継ぎ手を素材に選んだ。
 素材の中央部は外径7mm、内径4mm、切断する前に内径に2BAのタップを立てておく。次にボール盤で素材を掴み回転させて外径にやすりを当てて 1/4インチ径になる様に削っていく。外径がキッチリ1/4インチになったところでエンドカバーの厚みより若干薄いサイズに両端を切断し1インチに切った 2BAのスタッドを通してコンタクトブレーカーカバークリップに結合させた。

 マイナーパーツの準備が整ったのでマグネトーの組み立てに取り掛かる。
アーマチュアーにスリップリングを取り付け、スリップリングの端子にエポキシ樹脂でシーリングしておく。
次に、ワッシャー、オイルスロワー、シム、ベアリングインナーレースの順に組み、ベアリングに耐熱グリスを充填し本体にアーマチュアーを取り付ける。
タイミングギヤ側シャフトのウッドラフキーは先端がカットされている方を外側に向けて取り付け、センターナットと締め付ける際はこのウッドラフキーに干渉 しない様に注意する。
センターナットの規定トルクは10ft/lb、ファイバーギヤとスプリングプレートとのテンションは4−10ft/lbとなっているので、かなり緩い目の 締め付けで良い。

 最後にアースブラシとピックアップを取り付けて完成だ。
マグダイノが仕上がったので次回からはクラッチの組み立てを予定している。