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泉の森自転車店
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190oフルワイズ

 徐々に形になってきた私のゴールドスターだが、やればやるほど色々と欲が出てくる。
私の場合、綺麗に仕上げる事以上に、速く走れるオートバイに仕上げる事を重要視しているので、足回りに関しては妥協したくない。
50年以上も前のオートバイだから、現行車の様にまではいかないとしても、ゴールドスターの名を汚す事の無い様に仕上げたいものだ。
以前に乗っていた時から気になっていた事が多々有り、それらの問題点を一つずつ解決していかなければならない。
問題点は、高速走行時のハンドルの振れ、フルブレーキング時のフォークのガタつき、ダンパーの効きが甘く路面に追従しない、等々、数えれば切りがない。
個々の部品をチェックし、改善策を講じなければならない。
 まずはフロントホイールハブの点検から始める。
タイヤのビードを落とし、リムプロテクターを掛け、タイヤレバーでタイヤを取り外す。
この状態でホイールをバランサーに掛けて、ニップルスパナでスポークニップルを緩め、リムの内側からマイナスドライバーを使って、順にニップルを外していく。
 スポークを外し、ホイールハブ単体でバランスを点検してみた。
ホイールバランサーに掛けて回してみると、特定の位置で回転が停止する。
かなりの狂いが有る様だ。

 190oフルワイズハブは2ピース構造になっているので、アルミのハブ部分と鋳鉄のドラム部分が分割出来る。
試しに鋳鉄のドラム部分を外してみると、アンバランスが殆ど無くなった。
問題は鋳鉄のドラム部分に有る様だ。
よく見てみるとドラムのフィンが3枚欠けている。
再度ハブにドラムを組み付けて回し、欠けている部分が上にきた位置で停止すれば、原因はフィン欠けによるものだと考えられる。
点検の結果はNoであった。
ハブに対してドラム内径の真円は出ているので、ドラムの外周側で調整するしかない。
ドラムのフィンを修正してから、外周側でウエイト調整をする予定だ。
フィンの修正に使う鋳鉄の素材を探さなければならない。

 190mmフルワイズブレーキドラムの破損部分を補修する。
欠けたフィンに鋳鉄の素材を切って貼り合わせようかと思っていたが、ドラム本体の肉厚に余裕があるのでアークで肉盛りする事にした。
熱が伝わり過ぎないように慎重に作業したので、3枚のフィンを補修するのに2時間ほど掛かってしまった。
後はヤスリで形を整えて塗装すれば補修跡も目立たなくなるだろう。

 フロントハブからベアリングを取り外し、ハブパネルをバフ掛けした。
白く腐食した部分が消えるまで青棒を使って磨き、光に翳しバフ目が目立たない様に磨き目を揃えていく。
 この程度で良いかと思えるところまで磨けたので、次回はベアリングの交換とオイルリテーニングワッシャーの製作に取り掛かる。

 ゴールドスターのハブベアリングは7/8インチサイズのボールベアリングが使われている。オリジナルはHoffmanのLS9で、現在入手可能なのは、 それに相当する代替品となる。メーカーによって型番が異なりLS9に相当する物は、SKFのRLS7か、RHPのLJ7/8が有名である。
当然、当時には非接触シールベアリングなど無い時代なので、ベアリンググリスをシーリングするにはオイルリテーニングワッシャーが必要となる。このリテーニングリングワッシャーを製作してみる。
 現在ならNBRゴムシートから作るのが一般的だろうが、今回は少し趣向を凝らしてコルクシートから切り出して作ってみようと思う。コルクシートを綺麗に 円切りするのに使ったのは、NTカッターのC−1500P、これなら直径1.8から17センチの円を綺麗に切る事が出来る。なかなかのアイデア品で通常な ら中心に位置決めのピン穴が開いてしまうのだが、NTカッターは固定具でセンターヘッドを押さえてカットする素材を押さえるので、ピン跡を残さずに切り抜 く事が出来る。

 フロントハブベアリングをホイールハブに挿入し、製作したオイルリテーニングワッシャーをフロントハブに取り付けた。この状態で一度ドラムを仮組し、ホ イールバランサーに掛けて、ホイールハブのアンバランスを点検しておく。ハブ本体のみでのアンバランスは殆ど無かったが、ドラムを取り付けるとかなりのア ンバランスが生じる。鋳鉄製のドラムにアンバランスが有る様だ。ドラム内面の真円はキッチリ出ているので、外周の冷却フィンを研磨し出来る限りのバランス 調整を取ってみた。

 スポークはストレートタイプを除き、内側用と外側用の2種類に分かれる。90°曲がっている方が外側用で、曲がりが緩い方が内側用である。ゴールドス ターのスポークは40穴なので内側用が20本、外側用が20本必要となる。スポークはステンレス製の190mmフルワイズ用の物を用意した。スポークを組 む前に、内側用と外側用をそれぞれ20本ずつ区分けして、組み付け時に混在しないよう注意する。

 スポークの組み付けに掛かる。最初に内側用スポークをハブの外側から内側に対して一つおきに通していく。写真からも分かるように、ニアサイド(左側)の アルミパネルに、以前の組み付けの痕跡が残っているので、ニアサイド側は、進行方向にホイールを回転(反時計回りに回転)させた際、ニップル側(リム側) が回転の後方に来る様に、リム穴3つおきに内側スポークを組み付けていく。それに対してオフサイド(右側)は、進行方向にホイールを回転(時計回りに回 転)させた際、ニップル側(リム側)が回転の前方に来る様に内側スポークを組み付けていく。簡単に説明すると、内側用スポークをニアサイド側とオフサイド 側をクロスさせながら組み付ける訳だ。内側用スポークが掛かったら外側用スポークを交差する形で組み付ける。最後の一本はどうしても干渉するので、干渉し たスポークを外して交差させる。全てのスポークが掛かったら、リム内側からマイナスドライバーで軽くテンションが掛かるまでニップルを回す。

 組み上がったアロイリムにリムストラップを取り付け、タイヤにビードワックスを塗っておく。タイヤ交換もコツを掴めば結構楽に出来る。タイヤのビードに たっぷりワックスを塗っておき、リムの内側にビードを掛けて時計回りにタイヤを回しながらビードを掛けていく。最初に掛かったビード部分をリムの一番深い 所(ニップル穴の辺り)に沈ませ、まだ掛かっていない方向に向けて引き寄せて回すのがコツだ。
フロントタイヤはAVON Speedmaster MkUcompetition 275/300H19を使用。