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泉の森自転車店
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大晦日のヨンジュ市場を通り四十階段を下りる。
地下鉄中央洞駅に着いたのは10時30分を少し回った頃だった。
ホームは薄暗い感じがして、本当に列車がやって来るのかと心配になるほどの気配だ。
寒いホームで列車を待っているとポツリポツリと人が集まり出した。
15分ほど待つとようやく列車が現れた。
 次の停車駅南浦洞(ナンポドン)で降り、カウントダウンのイベント会場に向かう。
この南浦洞の街は大阪のアメリカ村と雰囲気が似ている。
カジュアルな店が並ぶ街の途中に、アーケードの掛かったエスカレーターが有り、そのエスカレーターの先に本日のイベント会場が有る。
エスカレーターにはかなりの人が並んでいる。
なかなか前に進まないので、私はその横に併設された階段を使う事にした。
階段の途中に広場が有り、そこで僧侶が和紙に描いた絵を配っていた。
以前に釜山の駅前で僧侶から貰った事が有る。
記念に頂こうと思い手を差し出すと、僧侶が寄付を求めてきた。
「お前は出さないのか?」といった態度で寄付を求め来るので少しこうざめてしまった。
 イベント会場である龍頭山(ヨンドサン)には釜山タワーが建っている。
釜山タワーの前には鐘閣(チョンガク)が有り、この釣り鐘堂の鐘で除夜の鐘を突くカウントダウンイベントが始まるのだ。
11時を回った頃には、もうイベント会場はギッシリと人で埋め尽くされていた。
 鐘閣の前に、一体何人の人が集まっているのだろうか。
平年より暖かいとはいえ、深夜の釜山はかなり冷え込む。
韓国の人は本当に寒さに強いなと関心させられる。
身動きが儘ならぬ状態ではあるが、じっとはしていられない。
辛抱がたまらなくなって人波をかき分けて辺りを彷徨いていると吹奏楽団の姿が現れた。
揃いの凛々しい服装でデモンストレーションを行っている。
バックの鐘閣と吹奏楽団のコントラストが美しい。
場の雰囲気を盛り上げる韓国人のセンスの良さには何時もながら感服する。



 人波にもみくちゃにされながら、何とか会場の入り口付近まで辿り着いた。
テレビ放送車が待機している辺りが絶好のビューポイントのようだ。
鐘閣のバックに釜山タワーがそびえ立ち、吹奏楽団の音楽が正面に聞き取れる。
私はここで除夜の鐘を待つ事にした。



 吹奏楽団の演奏が終わり、人々のざわめきをかき消すかのごとく、鐘閣の除夜の鐘が釜山の街に響き渡った。
それに併せて、釜山港の船舶が一斉に汽笛を鳴らし始める。
実に見事なコラボレーションだ。
 冷たく澄み切った空気の流れが、百八の煩悩をかき消していく。
そこには宇宙を連想させるような、壮大な空間が生まれ、そして新たな精神が生まれる。
「新しい世に福多く来たれ!」
「セヘ・ポン・マニ・パドゥセヨ!」