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泉の森自転車店
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 翌朝は8時に起き、重い旅行鞄を提げ慶州駅まで歩いて行った。

 慶州駅に着いた私は、鉄道路線地図を前にこれから何処に行こうか迷っていた。来た時とは違うルートを通りたいのだが、あいにく中央線を通る直通列車は深 夜の夜行列車しか無い様だ。中央線経由でソウル(清涼里)まで行くには途中で1泊する必要がある。来た時のルートを辿り東大邱からKTXに乗れば昼過ぎに はソウルに到着する。中央線の乗車は次回の楽しみに取っておく事にし、慶州駅9時55分発ムグンファ号に乗った。

 列車が発車し駅構内を出ようとしたその時、乗客が血相を変えて運転室の扉を叩き始めた。乗り過ごしたから列車を止めてくれと叫んでいる。まさかとは思っ ていたが、さすがは韓国人、列車はすぐさま緊急停車した。日本では「規則ですからホーム以外での乗降は出来ません。」と冷たくあしらわれるのだが、韓国の 機関士には、こう云った時の裁量が有るのだろう。
 緊急停車のお蔭で5分ほど遅延したが他の乗客達は不満そうな顔一つせず平然とやり過ごしている。要領の解っていない私は乗り継ぎの時間が不安ではあるのだが...
 東大邱行きムグンファ号は約3分遅れで東大邱駅に到着した。KTXに乗り換えるために跨線橋を渡り専用ホームに降り立つと初老の女性が「蔚山行きは何処 だ?」と、聞いてくる。「多分、あっちだろう。」と、ムグンファ号を降りたホームを指差して答えると、「あんたは何処から来た?」と、聞いてくるので、 うっかり「日本から来た。」と、答えてしまい、こんな奴に聞いたのが間違いだったという顔をされ、無言で立ち去られてしまった。
 KTXに乗り込む前に飲み物を調達しておきたかったのだが、そんな時間も無くソウル行きの列車が入線して来た。KTXはここ東大邱から終点のソウルまで の間、在来線から離れて専用線上を走る。釜山=東大邱間は在来線上を走るので新幹線の本領を発揮出来ずに最高速度を抑えて走るのだが、ここからは新幹線本 来の性能を発揮して最高速度300qで走行する。どんな走りをするのか楽しみだ。
 ソウル行きKTXは東大邱駅を後に静かに走り出した。在来線から離れるまでの間は速度を抑えて走行していたが、在来線から離れると徐々に速度を上げ、直 線が続く区間になると期待通りの時速300qを軽くマークした。日本の新幹線はほとんどの区間が防音壁で囲われているが、韓国のKTXはそういった障害物 もなく、ダイナミックな車窓を楽しむ事が出来る。床下に駆動用のモーターが無く、車軸が客室の両端に配置されている関係だろうか、静かでしかも振動が感じ られない。乗り心地の面では日本の新幹線を遙かに上回っている。
 私を乗せたKTXはあっという間に、大田、水原を過ぎ、13時24分定刻にソウル駅に到着した。KTX開業に合わせて大改装されたソウル駅は、以前の薄暗く日帝時代の京城駅を偲ばせる趣は完全に払拭されていた。



 コンコースの向かい側には飲食店が並び、その奥は駅デパートになっている。駅舎の外に出ると、ガラス張りの直線と曲線を融合させた美しいデザインの建物 が視界一杯に広がった。釜山駅の新しい駅舎は旧駅舎のデザインを継承する物であったが、ソウル駅の新しい駅舎は昔の面影を一切残さず、新時代を迎えた韓国 の表玄関にふさわしいスタイルとなっている。
 取り壊されるのではないかと懸念されていた旧駅舎は保存が決まったようで、東京駅をモデルとした美しい姿を今でも見る事が出来る。

 旧ソウル駅舎の前にある地下鉄入り口を降り1号線に乗り込む。重い鞄を持ったままでは身動きが取れないので、ひとまず永登浦の宿に荷物を下ろす事にした。チェックインには早すぎる時間ではあるが、何時も世話になっている宿なので融通は利くだろう。
 永登浦駅はソウル駅から6駅目に有る。南営(ナミョン)、龍山(ヨンサン)、鷲梁津(ノリャンジン)、大方(テバン)、新吉(シンギル)、永登浦(ヨン ドゥンポ)、何度か利用しているので駅名順も覚えてしまった。御堂筋線に乗るのと大して変わらない感覚で乗る事が出来る。
 電鉄永登浦駅の駅ビルにはロッテ百貨店も入っており、鉄道の要衝駅にふさわしい立派な駅である。駅のコンコースにはPCコーナーも設置されている。後ほど利用しようと思うので千ウォン札を何枚か両替しておいた。
 これから先、ソウル市内やソウル近郊を巡る予定なので、地下街にある鞄屋で小さなカバンを1つ購入した。これで身軽に行動が出来るようになった。
 何時も泊まる永登浦の宿は駅から100mほどの所に在る。雑居ビルの4階に受付があり、そこで2泊分の料金5万ウォンを払って部屋の鍵を貰う。部屋に荷物を置いて再び永登浦駅へと向かった。