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泉の森自転車店
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 慶煕宮を出て、何処に行くという当てもなく歩き始めた。行き先の知らないバスに乗り込むのも手だろうが、いくら韓国の日没が遅いとは云え、あまり日が長いとは思えない。限られた時間でじっくり物事を見て回るには歩くのが一番だろう。
 世宗路に出てコリアナホテルの前で地下道を渡る。地上に上がった所にソウル市庁の建物が見えた。庁舎前には芝生の広場があり、そこには仕事帰りの多くの 市民が集まり、羽根を休めている。時報と共に噴水の水が出たのだろう。突然のアクシデントか、それとも知っての事か、女子高生の3人組が噴水の水を頭から かぶって騒いでいる。

 時間は既に7時を過ぎている。地下鉄に乗って永登浦に戻ろうと思う。庁舎横の地下鉄入り口を降り、自動券売機の所に向かうと、アベックの日本人観光客が機械の前で何やら間誤ついている。
 とりあえず切符を買ってから相談に乗ってあげようと、お先に機械に金を入れたが、どうやら機械が故障しているらしい。取り消しボタンを押しても金が返っ て来ない。速攻、呼び出しボタンを押して係員を呼び出した。すぐに駅員が出て来て「また、調子が悪くなったな。すみませんね。」そう言って、お金を隣の機 械に入れ、「こちらでどうぞ。」と、日常茶飯事の業務であるかの如く素早く対応してくれた。
 先ほどのアベックは、お目当ての切符に有り付けていない様子なので、行き先を聞いて切符の買い方を説明した。
「ところで、潰れた機械にお金、取られなかった?」
「切符が買えたし、安いですし、もういいです。」
私も初めて韓国に来たときなら、そう引き下がっていたかもしれない。
だが、ここ韓国では日本人のスタイルで行くと、泣き寝入りの連続になってしまう。
現に先ほどの機械には販売中止の張り紙もされていない。
 アベック達は、これから明洞に向かうと言う。明洞なら市庁から歩いて行ける距離なのだが...地下鉄に乗ってしまうと乗り換えが大変だ。
 これから明洞に向かうと言うアベックはソウル駅で下車した。ソウル駅から無事真っ直ぐ明洞に辿り着くだろうか。社交辞令のつもりで「案内しましょう か?」と言ってみたが、彼氏の方は明らかに「大きなお世話です。」と云った顔つきをしていた 。お金には余裕が有りそうだし、不安ならタクシーにでも乗るだろう。
 電鉄永登浦駅で降り、ソウル滞在時に利用している食堂に寄ってみる。店内を覗くと現在改装中の様で、見掛けた事の無いおばさんと目が合った。何時も大歓迎してくれるイムおばさんは居ない様だ。「イムおばさん、店を閉めたのかな?」不安が過ぎる。
 隣の店で韓国海苔巻き2巻を買い、道路向かいの雑貨屋で缶ビールを買い込んで宿へと戻る。
 私が利用する宿は、雑居ビルの4階と5階が旅館として使われている。今はそうではないが、元々この旅館は連れ込み宿だった様だ。エレベーターを降りた所 に管理人室が有り、薄暗い廊下はエロビデオが並べられ、怪しげなブラックライトで青く照らされている。部屋に入ると、一見、変哲もない普通に安宿に見える が、ベッド横の壁には金髪女性のヌード画が掛けられ、明かりを点けると趣味の悪いブラックライトがエロ画をライトアップする。
 実はこの宿、韓国の友人の父上に紹介してもらった。趣味は悪いのだが管理人は至って親切で意外と安全のなのだ。階下の街はルンペンが屯(たむろ)するスラブ街、まさかの異邦人には代えって安全なのかもしれない。